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GM生き残り?

GM 大幅人員削減

早期退職応募者が想定以上に多かったらしい。ちなみにこれは良いニュースである。工場閉鎖とか解雇って聞くとネガティブに感じがちだが実際は経費が減るという意味でポジティブなニュース。

このニュースを見て、ワゴナー会長が会社更生法を申請しなかった理由が少し見えてきた気がする。どうしてあんなに自信満々なのか、ずっと疑問に思っていたが、人員削減ができるつもりだったのであれば納得である。

ここ1年間はいろんなビジネススタディでGMばかりやってきたので、すっかりGMウォッチャーが仕事になってしまった。色々と調べ物をするので報道資料も読むのだが、GMに関する報道は日米共ににぎやかなものがある。しかし、アメリカのメディアに比べて、日本のメディアの報道はあまりに無知をさらけだしているものが多い。

下記などは、典型的な例
検証:GMクライシス(1)〜値引き販売が諸悪の根源 - ニュース解説 - nikkeibp.jp

日経BP社のニュース解説なのだが、日本に流れてくるニュースだけを見て書いているのではないか?という匂いがプンプン。誰かが日本向けに翻訳要約した配信だけを見ていたら、配信者以上に掘り下げることなど不可能だから、できるだけソースに近いところまで自分で近づかなければ真実など報道できないという見本みたいな話である。

GM報道に見られる大間違いの例
1)体質がとかデザインがとか燃費がという話と赤字の結びつけ。
体質うんぬんなどは傾向の問題で単年度の問題ではない。対して赤字は昨年のみで一昨年まではずっと黒字である。そもそも会計上の利益はあまり意味をなさない。帳簿上の赤字黒字よりもキャッシュフローの焦げ付きがGMの危機であり、GMくらいの会社の株主になればどこを見るべきかはわかっている。(会計上の利益というのは操作可能であり、たとえば日本においては実に7割以上のビジネスが赤字決算しているが、毎年7割の会社が倒産するわけではない。)これはGMに関係なく、会計というものを少し勉強すれば当然わかるべきことである。ちなみに僕は自分の趣味でいくつか本を読んで勉強しただけだが、アメリカのビジネススクールで会計学の授業を受けても大した差は感じない。つまり別に会計の専門家じゃなくても、ちょっと調べればわかる程度のことである。

2)日米の新車販売のシステムの違い
赤字でのセールは確かに感心することではないが、アメリカでは新車も受注生産ではなく、ほとんどが在庫販売である。したがって、ディーラーは巨大な在庫を抱えている。それを吐き出さないと次の手が何も打てないので、ある程度不可避であった。

3)GMはいまだにシェア1位、世界最大の自動車産業
来年には世界一ではなくなるだろうけれど、少なくともまだアメリカではダントツのシェア1位である。日本でアメ車を見ないからと言って、GMがアメリカでも丸っきり売れてないかのような感覚でいる人が多すぎる。せめてGMが売っている車種の半分くらいだけでも名前を挙げられるようになってから、「GMには魅力的な車種がない」とか言って欲しい。

4)燃費の話
ガソリン代はものすごく値上がりしてショッキングではある。この10年で3倍くらいは変化しているから、精神的なダメージは大きい。この値上がり幅のショックも日本とは別世界である。今年リッター120円だったガソリンが来年240円になったら?そして次の年には300円。アメリカにおける価格変動はそれくらいのインパクト。
しかし、その一方で絶対価格は安く、ハイブリッドを買っても元は取れないというのが常識でもある。
結局SUVは売れている。特に新しいタホは同じクラスでは最も燃費が良いため絶好調らしい。同じクラスの車種同士を比べたら、GMの方がトヨタ、日産より燃費が良いこともしばしばある。プリウスやカローラがいくら燃費が良くてもモーターボートは引けないことも忘れてはいけない。

5)医療費問題
GMの危機のほとんどは医療費問題であり、GMだけが特別医療費負担が大きい。この問題は何兆円規模であり、これが解決すれば残りの問題はゴミみたいなものである。諸悪の根源は組合UAWで、小型車やハイブリッドやデザインなどは誤差の範囲内。

というようなことはアメリカの新聞を読むだけでもわかることなのに、日本の報道関係者はそれくらいのこともしないで報道するんだなぁ。それが結局井の中の蛙を作ることになり、国際社会での日本の競争力を失わせるんだと思う。


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