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June 28, 2006

頭脳流出は個人だけではない

NIKKEI NET:企業 ニュース: 武田、米合弁巡り約570億円の追徴課税・取り消し求める方針

日本は税収不足と財政赤字に悩み、国税局は完全に金持ち狙い撃ちを始めているが、国際化社会において優良国際企業狙い撃ちをしたら、良い会社はどんどん外国へ逃げてしまうだろう。

表題の武田は日本で唯一、国際競争ができる(かもしれない)薬品会社である。そして、武田が日本にとどまらなければならない理由は特に無い。社長の武田さんが日本人で日本が好きなことくらいしか絶対的な理由はあるまい。医薬品業界において、日本であることの利点はほとんどないのだから。

問題となった合弁会社は、実質的にライバルでもある米国企業との合弁で、アメリカ人に手玉に取られずに商売をしているだけでも大したものである。まして、利益移転のためになど使えるはずも無い。武田は日本でこそ1位だが、世界の中では数ある二流企業でしかなく、合弁先に対して強く出られるわけもないからだ。合弁企業に利益を移したら、合弁相手に吸い取られるのが落ちである。というか実際今でもけっこう吸い取られていると思う。

武田は経営が非常に上手で、お金があり、アメリカでは史上最大の罰金を払うことができたほどである。せこい脱税をする理由など無く、問題の会社も特許切れが近づく中でどう縮小していくかが問題となる会社だ。武田の「意図も動機もない」という反論はもっともに思える。

もうかっているからイチャモンつけて金を取る気なのか?もうかっているイコール脱税というマインドセットなのか?何を考えているのかは知らないが、国際競争の中で高収益をあげている会社を狙い撃ちするようなことをしたら、優秀な企業は真剣に海外移転を考えるだろう。そうでなくても日本の税制は国際競争に不利であるし、日本に残る理由は元々少ないから。外貨を稼いでいる会社が海外に逃亡したら日本がどうなるかを考えれば、むしろ逆に優遇するくらいのことをしないと日本は破滅へ一歩近づくだけである。

企業の海外移転は障害は大きいが決定したら甚大なダメージを日本経済に与えるから、いつまでも「日本人なのだからお上の言うことには逆らうな。」とか「日本人だから日本の外には逃げられまい。」という考え方で「絞れば絞るほどとれる。」と思わないほうがいいだろう。

何度でも書くが、外貨を稼いでくれる極少数の日本人がいなくなったら、日本はマレーシアやフィリピンと大差ないアジアの小国になるだけだ。誰のおかげで先進国と呼ばれるかを真剣に考えるべきである。

武田薬品、海外に1200億円所得移転・大阪国税局指摘

ちなみに武田は合弁先に値段が高すぎると訴えられているのだそうな。それを国税は値段が安すぎるから脱税だと主張。余計な税金を払うか、提携先を失うかという無茶な選択を迫っていることになる。そうやって日本企業を弱くするのが政府の仕事か?

今、税金を払っている人から余計にとることを考えずに、今、税金を払っていない人間から税金を取ることを考えてもらいたい。

投稿者 kid : June 28, 2006 09:26 PM

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